TOKYO!の感想など。

久々に映画見たー。
戦前の日本映画や戦中のプロパガンダ映画はたまに見にいくのですが、現代のものを見にいくのは久しぶり。もう、古い映画はいいや。厭きた。プロパガンダ映画とか作っちゃう映画監督とかなんと言おうと間違ってるしな。どんな時代でも作り手はプロパガンダに加担してはいけないのだよ。あほくさいお涙頂戴が多くて面白かったりするが。皮肉に取れるものも多いがな。


そんなことはさておき。
昨年からその動向が気になっていた映画「TOKYO!」。渋谷の道玄坂方面に行くのは何年ぶりだろうか。シネマライズに到着するまでに精気をそうとう失った。不思議だ。10年以上前、パルコで働いていたので毎日通っていた渋谷。ここ数年は、できるならば行かずにすめばいいと思っていた渋谷。しかし行かなければいけないときが来た。池袋はもっと嫌だ。シネマライズ、「ドッグヴィル」以来かしら。


三本のオムニバスで、三人の監督がそれぞれに東京を描いておりました。順どおりしょうもない感想など。

★ミシェルゴンドリー「インテリアデザイン」
 これ、すごい。精気がよみがえった。ダントツで(というか個人的にはこれだけ)面白かったし、映画してた。田舎から出てきたヒロコとアキラ。あらすじはTOKYO!のサイトで見ていただくとして。
 前半の地味で微妙な人間模様がなんともせつない。何をやってもうまくいかず、「アキラの彼女」でしかないヒロコが椅子に変身するところは見ものです。荒唐無稽なようで、全く違和感がなく、すんなり受け容れられる。しかもそのシーンがとにかく面白い。椅子になってミュージシャンの大森南朋に拾われ、初めて自分が役に立つ人間だと実感するヒロコ。椅子になったヒロコと大森南朋の恋の予感をさせながら映画は終わるのですが、きっと、ヒロコはこんど「大森南朋の椅子」でしかない自分に悩むことになるんだろうな。そうしたら次は何に変身するのだろう・・・。
 どうも、30歳前後くらいからのオナゴの大きな悩みって、「自己実現」的なものが多いんだと思うんです。その言葉じたいはくだらなくて馬鹿馬鹿しい響きがあるのですが、やはり「本当の私」はどこにあるんだ?と、悩むことは止めようがなくて。呑気だしアホ臭いと思いながらもそこで葛藤してしまう。相対的にしか自分を評価できないことに気付き絶望しながらも、生きていくしかないときにどかんと変身するのです。ヒロコは東京にやってくるまで、それを知る必要がなかった。
 結婚して夫に「お父さん、今日もお仕事頑張ってね」みたいなこと言えちゃうオンナには、自己実現なんてありえないんでしょう。「誰かの何か」であることだけが誇りのオンナってのは確かにいるし、おめでたいというか、ある意味羨ましかったりする。そういうのを馬鹿にしてる自分がいるし、そういうオンナは大嫌いだったりする。しかしその要素が自分に無いとは絶対に言えない。
 しかしまぁ、「本当の私」など、どこにもいるはずもないので、東京で変身を繰り返していくのではないだろうか、ヒロコは。悩むオナゴ、ヒロコ。藤谷文子そのものではないか!
 この映画のいいところのひとつはキャスティングの素晴らしさ。藤谷文子加瀬亮大森南朋もみなナチュラル。私の好み。変な演技をする人がいなかったので安心して見ていられた。監督の力なのだろう。この映画、とにかくキュートで切なくてオリジナリティ溢れた映画なので、同じテーマでもうすこし突っ込んで、長編にして欲しいと思った。もちろん主役は藤谷文子でね。彼女のナチュラルというか、毒されない素朴さは他にない才能。


 長く感想書きすぎたから、他の感想を書く気力が無くなってしまった。
 
 ★カラックスの「メルド」はまぁまぁ面白かった。カラックスはずっとドニラヴァンを使い続けるのかしら。裁判のシーンなど、二重通訳で笑った。東京ってことで東京裁判のパロディなのだろう。中学生か高校生のときにみた「ポンヌフの恋人」で、ジュリエットビノシュとドニラヴァンが海岸沿いを全裸で走っているシーンがあって、シルエットだけなのだが、ジュリエットビノシュが掴んでいるドニラヴァンのちんこが異様にでかくて、フランス人のちんこがでかいのか、ドニラヴァンのちんこがでかいのか、そのことで頭がいっぱいになってその後の映画の内容をあまり覚えていないのだが、メルドでしぼんだドニラヴァンのちんこが映って、ポンヌフのときのちんこはニセモノだったのでは・・・?という疑惑で今度は頭がいっぱいになってしまった。


 ★ポンジュノ「Shaking Tokyo」、これは最悪。10年以上引きこもりという設定じたい嫌悪感を抱くのだが、香川照之がね、苦手なんです。以前みた「ゆれる」という映画でそうとう頓珍漢な演技を見たもので。それは好みの問題と片付けるとして、冒頭からのモノローグのからっぽさに辟易。それに私、小学生の頃から月に1、2度、宅配ピザを食べているので、身体の約20分の1は宅配ピザで出来ているのですが、いまだかつて女の配達員に遭遇したことがございません。まぁ、それもいいとしよう。気持ち悪いのはですね、蒼井優ちゃんの使い方。反抗的で孤独で無垢な美少女なのですよ。そしてそんな蒼井優ちゃんに白のワンピースを着せてしまう監督の悪趣味に鳥肌立ちました。玄関からなかなか外へ出られない香川照之の演出とか、まじでひきます。香川照之演じる引きこもりのオトコは、女子高生を買春して恋したなどとのたまうおっさんの心境にそう遠くないロリコン趣味です。きもいんです。ダメなんです、こういうの。竹中直人が出てきてさらに心臓が痛くなりました。LOVEボタンで撃沈です・・・。日本と韓国、とても近い国という実感。