武蔵野館

人が二人横並びになったらいっぱいな細い通路にて、前方からこの冷夏にどこで焼いたんだ?と不思議に思うくらい真っ黒焦げの痩せっぽのギャルと、同じく真っ黒焦げの彼氏が、仲良く手をつないでやってきた。私をちらと見とめながら繋いだ手を離さずに通路いっぱいに広がって、私たちはどきませんと決め込んだと思われた。
私は避けようにも通路が細すぎて行き場がないため立ち止まって舌打ちしてしまった(悪い癖)。ギャルは私の舌打ちに気付いたようで、「邪魔なんだよ!」とキレ気味に言い、すれ違いざまに鞄をぶつけてきた。私はギャルらを見ることなくうつむき加減で「おまえら臭いよ」と咄嗟に言っていた。
「邪魔」に対して「臭い」とはまったく返しになっていないことに気付いて自分でも驚いたが、それ以上に、舌打ちという私の非礼に対し、彼らは「邪魔」という非礼で返し、それを咄嗟とはいえ「臭い」という極めて悪意に満ちた非礼で返してしまった自分に驚いた。(実際、安価な香水を彼らは多量につけてたんですよね。むせたよ。夏だね。) 
そしてギャルは「うっせーんだよ!」と私の背中に言った。
なにやってんだ私は・・と思いながら、なんかちょっと楽しかったです。うへへ。