森の王

ボクシングの世界チャンピオンって、金枝篇に出てくる森の王みたいなとこあるからドキドキさせられるのかな。金枝篇大好き。
こないだ「アンヴィル」みにいった。ダメダメな男に愛を注ぐ映画って昔からたくさんあるが、これはシンプルにステレオタイプなそのテ。ちょっと前に流行った傾向。包茎映画とでもいうのかな。ドキュメンタリーだと監督の存在が大きいことが多いけど、アンヴィルは監督の姿がまるで見えないというか、監督の才能すらまるで見えない変な映画だった。ストーンヘンジに行ったところが唯一垣間見た気がした。ラストが気に食わなかった。泣いたけど。
男への愛情映画は、90年代初頭のキアロスタミの右に出るものはいないと思う。やっぱりものすごーく嫌な奴が作った映画が好き。「クローズ・アップ」とか「オリーブの林を抜けて」のキアロスタミって本当嫌な奴だと思う。切なくなるくらい愛すべき善良な主人公とは真逆の極悪非道な監督キアロスタミ。人を人とも思わない残酷さが好き。
男への愛情・・。本当にどうしようもない救いのない男ってどんなもんだと思うと、いつもフェリーニの「道」のアンソニー・クインを思い出す。あれってジュリエッタ・マシーナの役の比じゃないほど不幸な男だった。あそこまでの欠陥人間て、天才芸術家になるしかないと思った。生き血を吸ってしか生きられない人間に許されるのってこの世じゃそれしかないじゃん。でも、天才芸術家でもなんでもなくてもあんなのよくいるか。もう20年くらいみてないけど、思い出しては泣く。